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2005年05月

2005年05月31日

不動産コンサルタント始末記 12

8929163f.jpg第12話 差押

判決が出た後、早速、執行文の付与手続きを行い強制執行の手続きに入った。

滞納賃料の支払い請求、及び建物明渡請求による訴訟の場合、確定判決や仮執行宣言付判決をとったからといって、直ちに強制執行ができるものではない。
強制執行を求める場合、その判決に執行文の付与という手続きを行い、かつ、その判決の送達証明書を取得してから、その強制執行を行う不動産の所在地を管轄する地方裁判所の執行官室に強制執行の申立てを行わなければならない。

「いやぁ、びっくりしましたよ。」
廣瀬が強制執行手続きを行い、2週間ほどして吉田から電話が入った。
「役場にやくざみたいな口調で電話が入って、またサラ金からの電話だと勘違いしました。」
吉田は、執行官からの電話の印象を廣瀬に伝えた。

「だいたい執行官って、気短な人が多いんですよ。」廣瀬は笑いながら吉田に言った。
「ああじゃないと、務まんないのかもしれませんね。」
「再来週の水曜日、先生と廣瀬さんのご都合は如何ですか。」
吉田は、執行官から言われた日時で倉橋と廣瀬の都合を聞いた。
「執行官がすぐに電話をよこせって言うんです。」
「毎週水曜日は当社の定休日ですから、私は大丈夫です。たぶん倉橋も大丈夫でしょう。」廣瀬は、吉田に言った。

「それで予定を入れちゃってください。」
廣瀬は、倉橋の執筆業務が遅れており、その日、自宅書斎で執筆する予定を知っていた。
強制執行の前には、まず建物内の動産を差し押さえるのと同時に、建物明渡しの言渡しを行う。
その際、当事者、執行官、第三者が立会い、執行官が建物内部にある被告の家財を差し押さえ、差押動産の明細書と明渡命令を作成し、目の届く所に貼り付ける。
昔は差押が行われると通称赤紙といった差押札を貼り付けたようであるが、近年はプライバシーの侵害などの理由から差押動産を一覧表にして貼り付けるようになっている。
「廣瀬、秀栄さんに電話して。」廣瀬から差押期日の報告を受けると、また原稿が遅れるな、と思いながらも倉橋は差押の段取りを廣瀬に指示した。

「今回は強制執行断行の可能性が大きいから、交渉も含めて依頼しといてね。」秀栄とは、いわゆる道具屋と呼ばれる業者である。
建物明渡しの強制執行の場合、差し押さえた動産は自ら競落して処分してしまえばよいが、差し押さえのできない動産、いわゆる差押禁止動産の類は、一定の期間保管しなければならない。
それらの業務一切を仕切ってくれるのが、このいわゆる道具屋と呼ばれる業者なのである。
倉橋は関東圏内の強制執行には、いつもこの秀栄という業者を使っている。
というのは、こういった業者は、あまり一般的な業種ではないため利用者に信用がないとかなり高額な費用を請求される。
倉橋はこの業者とは長い付き合いであり、費用もかなり安く請け負ってくれるから依頼者に有利な取り計らいができる。
また道具屋も、自己経費を圧縮するため、保管家財等はなるべく処分できるよう差押日から強制執行当日までの間に被告(債務者)から放棄書という文書を取得するよう努力する。
詳細は不明であるが、多分、債務者と金銭解決により放棄書を取得するのだろう。
この放棄書があれば強制執行当日に保管荷物を処分することができるため、道具屋も依頼者もわずらわしい保管行為を回避することができる。
この辺のノウハウがある業者とない業者では、依頼者のストレスが大きく変わってくることになる。

「倉橋先生、いつもお世話になります。」
秀栄の社長、高橋が愛想よく挨拶をした。

「相変わらず、先生のところは強制執行が多いですね。」

「人聞きの悪いこといわないでよ。」吉田、廣瀬のいる物件の前で、倉橋は高橋に言った。
「これ、うちの管理物件じゃないないからね。」 
差押日の当日、4人は前田の自宅前で執行官を待っていた。
差押日の当日は、通常、原告、第三者、執行官の三者で立会いのもと差押を決行する。
その際、その物件内に立ち入れないと差押不調となるため、その部屋の鍵が必要となる。本件建物の鍵を吉田は持っていないため、別に鍵屋も呼んでいた。

「鍵は、ジェイファースト?」 倉橋は、廣瀬に確認した。

ジェイファーストは、倉橋の弟が経営するリフォーム業者であるが、倉橋の指示で何でもやるため重宝に使っている。

「あいつ、もう来てるの。」
「さっき、エントランスにいましたから、執行官と一緒に上がってくるんじゃないですか。」廣瀬が何だか楽しそうに答えた。

「それより、前田さん、中にいますかね。」
「いた場合、どうなるんですか。」 吉田は、廣瀬とは対照的に不安げに言った。
「差押は中止ですか。」
「中止なんて、あるもんか。」 高橋が吉田に言った。
「差押も強制執行も、執行官がついてりゃぁ債務者は関係ないんだ。先生がついてるから、安心しなよ。」 乱暴な口調で言った。
「噂をすれば何とかだぜ。執行官の登場だ。」
共用廊下からエントランスを見下ろしたところで、1台のタクシーから執行官が降りてくるのが見えた。
執行官は薄手のコートに帽子をかぶった格好で、ジェイファーストの倉橋が愛想よく出迎え、こちらに案内をしてくる様子が見えた。

「原告、吉田さんは、誰?」 我々一団と向かい合い、執行官は言った。
「はい、私が吉田です。」
「執行官の山田です。」執行官は電話口での口調と打って変わり、やさしい声で言った。
「あ、今回も高橋さんがやるのね。」
秀栄の高橋はほとんどの執行官とは顔なじみのようである。
「ま、それならスムーズにいきますね。」 執行官は時計を見た。
「9時10分。では、差押手続きを開始します。」
執行官の合図で、廣瀬がインターホンのスイッチを押した。

「前田さん、いらっしゃいますか。前田さぁん。」何度か声をかけたが、中からの反応はなかった。

「じゃあ、倉橋さん、鍵、壊してください。」ジェイファーストの倉橋に廣瀬が指示を出した。

「了解。」ジェイファーストの倉橋は、手際よく玄関扉の鍵を壊しだした。

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2005年05月29日

不動産コンサルタント始末記 11

700e71d0.jpg第11話 結審

「前田さん、廣瀬です。」インターホンを押しながら、廣瀬が言った。

「いらっしゃいますか。」
「はぁい。」
入居者の前田は、別に何もなかった様子でマンションの扉を開けた。
「こんにちは。」
「前田さん、こちら所有者の吉田さんです。」
廣瀬が前田に吉田を紹介した。
「はじめまして、吉田といいます。」
吉田は、丁寧な挨拶をした。
「あらぁ、お若い方ですのね。」
前田は、これから仕事に出かける所だったらしく、化粧が整い、胸の谷間が大きくはだけた服装をしていた。
「大家さんっていうと、もっと年老いた方かと思ってました。」
「今日、裁判だったのはご存知ですか。」倉橋は、前田に切り出した。
「裁判所には、いらっしゃいませんでしたよね。」
「はい、行っても仕方がないと思いましたし...。」
少し俯いた様子で前田が言った。
「娘の学校にも呼び出されましたので。」
マンションの扉の向こうには、髪の毛をまっ茶色に染めた高校生の娘がこちらを窺っていた。
「本日、裁判のほうは結審しました。」
倉橋は前田に対し、裁判の結果を報告した。
「つまり、来週早々、前田さんはここを出なさい、というような判決が言い渡されます。」
「やっぱり、そうでしょうね。家賃も払っていないんですから。」前田も、結果については承知していた様子だった。
「でも、家賃を払ったら住めるんでしょ。」
「残念ですが、こちらとしては、前田さんに明渡してもらうことを望んでいます。」
倉橋は丁寧に言った。
「前田さんも、過去に遡ってたまった賃料を支払うことは無理でしょう。」
「そこは何とかしますから、せめて娘が高校を卒業するまでは、ここに住ませて貰えませんか。」
前田は振り返って部屋の中にいる娘のほうをチラッと見て言った。
「もう、高校3年生なんです。」
「お気持ちはわかりますが、残念です。」倉橋は、きっぱりと言った。
「こちらとしても、前田さんに恨みはありませんが、方針は決めています。強制執行までは時間があります。お早めに転居先を決めて、お出になってください。」
淡々と話す倉橋に、取り付く島がないと判断したのか、前田は、廣瀬にお願いした。
「高校3年生といえば、大切な時期なんです。うちの子は進学はしないと思いますが、ようやく立ち直ってきた所なんです。」
「いやぁ、私に言われましても。」前田に迫られた廣瀬は、返す言葉に詰まったが
「うちの先生が方針を決めてますので、私が変える訳にはいきません。」と、倉橋の決定であることを告げ、見放すように言った。
話のやり取りの中で、どうも前田の娘は不良であり、ようやく最近になって改善されてきたというような印象をもった。
「もう分かったから帰れよぅ。」部屋の中から、娘が出てきて言った。
「お母さん、この人たちが駄目だって言ってるんだから、いくら言ったって駄目なのよ。」
髪の毛はまっ茶に染め、薄化粧をした娘は、大人ぶってはいるものの、まだあどけない顔立ちをし、前田に似て美人だった。
「こんな廊下でみっともないから、もう、帰ってください。私たち、この家から出て行きますから。」
「お嬢さんね。この吉田さん、ここの大家さんなんだけどさ。この人もね、前田さんから家賃もらってなくて困ってるんだ。」
倉橋は、前田の娘に少しでも理解を得られるように話をした。
「もちろん、前田さんだけが悪いわけじゃなくてさ、権藤っていたろ。吉田さんも、お母さんも、この権藤に騙されちゃったわけ。」
睨みつける前田の娘に、賃料を支払わない理由を権藤のせいにして、家庭内がギクシャクしないよう配慮する為に付け加えた。
「そうはいっても、今日の裁判で確定したからね。やっぱり、ここは出てもらわなくちゃならないのね。あとで、よくお母さんと相談して、いい引越先探してね。」
「わかりました。」
娘は前田の腕を引っ張り部屋に引き入れると、バタンと扉を閉めた。
「なんだか、可哀想じゃないですか。」
無言のまま双方の会話を聞いていた吉田が、倉橋に言った。
「せめて高校を卒業するまで、待ってあげたらどうですか。」
「あのね、吉田さん。ここからは私情は禁物ですよ。」
法的手続きで私情は禁物である。動産の差し押さえから明渡しの強制執行に至るまで、このような場面は多くある。
例えば、債務者が泣いて縋ってきて期日を延期した所で、結果、解決に至ることはない。法的手続きは判決を取ってから強制執行に至るまで、相応な時間が掛かるようにできている。その間に積極的に双方解決に向かって努力し、それでも相手方が応じないときは、強制執行はやむを得ないのである。
ここは、プロとして引いてはいけない部分である。
「変に同情すると、吉田さん、傷口は深くなりますよ。」 
「それに吉田さん。」廣瀬が付け加えるように言った。
「あの娘さんが高校卒業するまで、資金的に耐えられるんですか。」

吉田は、この廣瀬の言葉に、背中に冷たいものが流れるのを感じた。

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2005年05月28日

不動産コンサルタント始末記 10

第10話 法廷

「どうなんですか、吉田さん。」
裁判官が、絶句している吉田に発言を促した。

「間違えました。最初から8万円です。」
吉田は、必死になって答えた。
「僕が権藤という人に騙されて、家賃15万円と聞いて買ったのですが、本当は8万円だったんです。」
「じゃあ、最初から8万円で間違いないのね。」
裁判官は、うんざりした表情で吉田に言った。
「ところであなたね、被告、つまり前田さんにね、会ったことあるの。」
倉橋も廣瀬も、まずい、と思った。
ここで会ってもいないとなると、債務について疑義が生じる。
こちらとしては家賃など8万円でも7万円でも、そんなことはどうでもよく、契約解除が認められ、明渡しの債務名義が取れれば良いのである。
「あ、あります。親子でここに住んでいます。」
まじめな吉田は、法廷で嘘をついた。
「僕が直接本人に会って、8万円であることを聞き出しましたので、間違いありません。」 
「ん〜、前田さんも一度、呼んだほうがいいかなぁ。」裁判官が、疑わしい目つきで吉田を眺めて言った。 
「裁判官、お願いです。何とか判決をもらえませんでしょうか。」吉田は必死で懇願した。
「正直言って、このマンションを購入して、家賃が入ってこないことによって、僕自身が消費者金融から多額な借金を抱えてしまいました。」
勝手に話し出した吉田に対し、書記官が静止しようとした所、裁判官が書記官を逆に静止し、吉田にしゃべらせた。
「僕は役場に勤めていて、その消費者金融からの矢のような催促に耐え切れなくなり、死のうとも思いました。だけど、父親が、務めていた学校を定年前に退職して、の退職金で一応の借金を返済することができましたが、このままでは、また、行き詰まってしまいます。」
気弱な吉田には珍しく、かなり高揚した声で裁判官に訴えた。 
傍聴人席にいた人たちも興味をもったのか、じっと吉田を見つめていた。 
「このままでは、両親に申し訳ないんです。僕が、こんなことさえしなければ、父親も、学校を辞めなくても済んだのに...。」
握りこぶしを原告席の机に押し付け、高揚した吉田の顔は真っ赤だった。

「僕は、僕は、自分の見栄の為に、両親の人生を狂わしてしまったんです。」

あろうことか、吉田は法廷で泣き崩れてしまった。
 
「わかった、分かりましたから、落ち着いて椅子にお座りなさい。」これには、裁判官も慌て、書記官が吉田を抱えるように椅子に座らせた。
「被告つまり前田さんね、本当に18ヶ月以上も家賃を滞納しているのね。」
「はい、間違いありません。」
椅子に座らせられた吉田は、涙も拭かずに呆然とした口調で答えた。

「あなた、役場に勤めているって言ったけど、公務員?。」裁判官は、唐突に吉田の身分を尋ねた。
「はい。地方公務員です。」
「あなた、公務員なんだから、今後は気をつけなさいね。公僕なんだから。」裁判官も、そういえば公務員である。
意味は不明であるが、同胞意識なのか、ま、公務員だから嘘はつかないだろうとの判断なのか、裁判官が吉田の方を笑顔で見ながら言った。

「本件は終結します。1週間後、判決します。以上、ご苦労様でした。」
力なく、吉田は原告席を後にし、傍聴人席の倉橋と廣瀬と合流して、裁判所を
後にした。

「いやぁ、みっともない所をお見せしました。」
 廣瀬の運転する車の後部座席に、倉橋と吉田が座ると、吉田が頭を掻きなが
 ら誰にともなく言った。
「おまけに、嘘、ついちゃいました。」
「いやぁ、上出来ですよ。」倉橋が吉田に慰めるように言うと、廣瀬はバックミラー越しに笑顔を見せた。
「1週間で判決ですから、かなりのスピード判決です。これも、吉田さんの迫真に迫った説得力のお陰です。良かったですよね。」
「先生、この後は、どんな感じになるんですか。」
「判決が出次第、執行文付与申請を行います。これは、吉田さんがこなくても手続きは取れます。」倉橋が手続きの流れを吉田に説明した。
「その後、室内の動産を差し押さえて、競売と明渡しの強制執行を行います。これも手続き的には、こちらで行えますので、吉田さんはわざわざ出てこなくても大丈夫です。ただ、差し押さえのときには強制的に室内に入りますので、吉田さんの立会いが必要です。当然、そのときには私たちも立ち会いますから、心配はいりません。」
「じゃあ、もう、裁判所にはこなくて良いんですか。」
吉田は、驚いたように倉橋に言った。
「もう、結審しましたからね。裁判所には行きせんよ。」
裁判などしたことのない吉田にとって、裁判の仕組みなど理解できないのかもしれないなと思いながら倉橋は言った。
「一般の人は、裁判って言うとすごく難しいイメージがありますが、やってみると簡単でしょ。」
「いやぁ、驚きました。こんなに簡単だとは思いませんでした。」
呆気に取られた様子で吉田がいうと、廣瀬が運転席から笑いながら言った。
「どんなに優秀な弁護士でも、吉田さんのように切迫して裁判官に迫れる人はいませんよ。」
そして、皮肉をこめて
「公務員でもないしね。」と言った。

・・・続きは、また、お届け致します!

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2005年05月27日

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2005年05月26日

不動産コンサルタント始末記 9

b34d5a27.jpg第9話 明渡請求裁判

廣瀬が契約解除付の訴状を提出して、概ね2週間程度で第1回口頭弁論期日が入った。

吉田は弁論期日の前日から横浜に出てきてスタンバイし、倉橋は、当日、吉田を法廷に慣れさせるために1時間ほど前に傍聴席に座らせた。

「裁判所って、本当にテレビで見たとおりなんですね。」吉田は横浜地方裁判所の法廷に入って、倉橋に言った。

「僕、大丈夫ですかね。」
「大丈夫ですよ。裁判官に聞かれたら、訴状のとおりですって言えばそれで終わりです。」

訴訟手続きの場合、概ね文書主義で審理される為、第1回口頭弁論の際、相手方から「答弁書」等が出れば、原告側は「準備書面」で対抗することになるが、本件のように賃料滞納による建物明渡し訴訟のような場合、契約違反は明らかな為、相手方が争ってくる可能性は少なく、意外に簡単に債務名義が取れることが多い。

「ただ、前田さんはこない可能性が高いですから、18ヶ月以上滞納されていることを強調して、何とか、今日、結審してくださいって言ってください。次回期日が入ると1ヶ月は後になりますから。」

法廷では、別件の損害賠償請求事件を審理しており、原告が裁判官に食い下がった所、裁判官が原告を大きな声で窘めていた。

「あなたね、何べん言えば分かるの。駄目なものは駄目なの。」
かなり気の短い裁判官らしく、更に食い下がろうとする原告に「もういいや。分からなければしょうがないね。結審します。判決は2週間後、以上。」
裁判官は、さっさと書類をとじると、不満そうな原告を退け、次の審理に進んだ。

「僕も、あんなふうに叱られるんですか。」
吉田は、この光景を見てかなり緊張しながら、倉橋に言った。
「いや、あれは原告が悪いんですよ。請求する相手方を間違えているから、裁判にならないんです。」
裁判の内容を察知し、簡単に裁判官が窘めている理由を倉橋は吉田に説明した。
「ただ、この裁判官は気が短そうだから、今日、結審してくれるかもしれませんよ。かえって有利です。」

裁判官にもいろいろな性格な人がおり、時間をかけて和解を勧める裁判官もいれば、結構早い段階で結審し、単刀直入な判決を下してくれる裁判官もいる。
本件のように賃料滞納による建物明渡し請求訴訟のような場合、相手方が出頭してこないときは、再度、呼び出しをかけて1ヶ月くらい後にもう一度口頭弁論を行うことが多い。しかしこれも裁判官の判断に基づく為、単刀直入に判決を下してくれるような裁判官の場合、1回の口頭弁論で終結してくれることもあるのである。

「吉田さん、落ち着いて訴状のとおりです、って言ってください。」
廣瀬が不安そうな吉田に耳打ちした。
「その後、18ヶ月以上滞納している事実を明確に裁判官に言って、吉田さんも困っていることも、言うチャンスがあれば言ってください。」
そして裁判官のほうを上目遣いで見た後、
「あの裁判官、気短のようですから、判決くださいって言ってみてください。」
吉田に向かって、廣瀬がニタッと笑った。

「建物明渡し請求事件、原告、吉田浩、被告、前田はじめ。」
書記官が法廷への呼び出しを行った。

「なお、被告は欠席です。」
「原告にお尋ねしますが、この賃料滞納の事実に間違いありませんか。」
裁判官は、吉田に丁寧に尋ねた。

「はい、間違いありません。」吉田は、気弱に答えた。
「訴状のとおりです。」
「あれ、契約書がないけど、保管してないの。」裁判官が意地悪そうに吉田に聞いた。
「ええ、それは、権藤という人がいまして、その人から勧められてこのマンションを買いまして。」吉田が裁判官にいままでの経緯を話し出した。

「最初は、15万円の約束だったのですが、いや、確かに15万円をもらっていたのですが.....。」
「あのね、聞かれたことだけ答えてください。」裁判官は苛立ちながらいった。
「契約書はないのね。」
「はい、ありません。」
「家賃は15万円って言ってたけど、訴状には8万円ってなってますよね。」
裁判官は、さらに意地悪そうに吉田に尋ねた。

「はい、いまは8万円です。」
吉田は、緊張の余り真っ赤な顔でおどおどしながら答えた。

「いまは、ってあなたは言うけど、訴状には当初より8万円と記載されているじゃないですか。」裁判官が少し大きな声で吉田に言った。

「訴状の記載内容に、偽りがあるのですか。」
倉橋も廣瀬も、傍聴人席で固唾を飲んだ。

吉田は俯いたまま、しばらく絶句してしまった。

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【筆者のプロフィール】
1958年生まれ。CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者であり、グループ企業十数社を率いる現役の実業家。20社を超える起業に携わり、複数の事業再生案件も成功させている。
また、自ら渡米して国際ライセンスのCPM(Certified Property Manager)を日本人で初めて取得しており、現IREN−JAPANの創生に携わり、2002年の会長に就任している。また、1993年(平成5年)には日本で初めてPMマニュアル「賃貸住宅仲介・管理の戦略・戦術と業務マニュアル」(環境企画)を執筆。当時は、まだ賃貸管理業務が体系化されていなかった時代に、契約書式や業務フローの効率化を発表。その後も3冊の業界向けマニュアル本を出版したことでプロパティマネジメントのエキスパートとして活躍し、日本全国で業界団体の講演などの活動が始まった。
1998年「賃貸トラブル110番」(にじゅういち出版)を出版。北野たけしさんの番組「ここが変だよ日本人」に出演し、その後、バラエティ番組にタレントとしても活動する。
2000年に日本で初めての不動産コンサルタント会社CFネッツを創業。不動産コンサルティング業界の第一人者であり、いまだグループ企業の創生を続けている。
不動産投資から不動産全般の法律問題、相続対策、建築コンサルティング等や、不動産業者向けの経営コンサルティングやシステム開発にも携わり、抜群の成果を誇る経営コンサルタントとしても活躍中。さらに執筆活動やテレビ、ラジオにも多数出演し、日本全国で講演なども行っている。
また、不動産投資家としても著名であり、2000年には日本で初めての不動産投資の著書「プロが教えるアッと驚く不動産投資」(住宅新報社刊)を出版し、「不動産投資成功の方程式」(朝日新聞出版社刊)など多くの著書も上梓している。
また澤田痴陶人の美術収集家でも知られ、澤田痴陶人美術館も所有運営し、「城ヶ島遊ヶ崎リゾート」「三崎港蔵」「六本木 遊ヶ崎」「三崎港ラーメン」「伊万里ちゃんぽん」などの飲食店の経営やプロデュースする美食家としても知られ、プロデュースした店舗がミシュランガイドに2店舗が掲載されている。
またユーチューブを活用したオンラインセミナーやCFネッツで行われている朝礼なども公開しており、多くのファンが存在する。
テレビ出演では「ここが変だよ日本人」「ジェネレーションジャングル」「ワールドビジネスサテライト」「ジョブチューン」「大人の歩き方」「ここが知りたい不動産」などに出演し、ラジオではFMヨコハマ「ここが知りたい不動産」にレギュラー出演している。  著書には「賃貸トラブル110番」「やっぱり不動産投資が一番」「不動産投資、成功の方程式」「お金に困らない人生設計」「損しない相続 遺言・相続税の正しい知識」「プロが教えるアッと驚く不動産投資」「馬鹿に効く薬」「生島ヒロシの相続一直線」「都市農地はこう変わる」「教訓」「賃貸トラブル解決の手続きと方法」「不動産投資 新プロの流儀」ほか多数。

CFネッツ ホームページ

1993年、「賃貸住宅仲介・管理の戦略・戦術と業務マニュアル」(環境企画)出版 その後、3冊のマニュアルを発表
1996年、社団法人 全国賃貸住宅経営協会横浜南部支部支部長に就任し、翌年、同協会の神奈川連合会の創設に伴い副会長に就任。
1998年、不動産業界に関するシンクタンクである不動産綜建研究所創設に伴い、取締役所長に就任。
1999年、総合的なウイークリー・マンスリー賃貸の運用会社である(株)月極倶楽部を創立、代表取締役に就任。
そして、ほぼ同時期に資産運用管理会社である株式会社CFネッツを創立し、代表取締役に就任する。
2001年、JREM国際CPM協会(現IREM−JAPAN) 副会長就任
2002年、JREM国際CPM協会(現IREM−JAPAN) 会長就任
2003年4月、IREM(全米不動産管理協会)より、CPM(公認不動産管理士 サーティファイド.プロパティマネージャー)の称号を取得。日本で初めての公式試験受験による取得者となる。
これまでに、株式会社南青山建築工房、株式会社日本テナントサービスなど、グループ会社18社、総社員数130名を超えるまでに成長させている。
また現在でも、不動産投資から不動産全般の法律問題、相続対策、建築コンサルティング等や、不動産業者向けの経営コンサルティングやシステム開発にも携わり、抜群の成果を誇る経営コンサルタントとしても活躍中。さらに執筆活動や日本全国で講演なども行っている。

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